若いだけで素晴らしい 〜「フォーエバー・ヤング」
もともとホナミは「枯れ専」ではない。
10代の頃から「キミみたいな娘は、ずうっと年が上の男性の方が合うんじゃない?」という、
押しつけがましいくどかれ方をしてきたが、おあいにくさま、年上には興味がなかった。
だいたい何で「年上の男性は頼り甲斐がある」だのという迷信がはびこっているのだ?
人生のスタートを早くきった分、ゴールも近いかもしれない人ってことだけでしょ。
同世代でいいのだ。
どちらか一方がリードするのではなく、同じ時代背景の中で育った未熟者同士が、
お互いに試行錯誤しながら歩んでいく…これぞ人生の醍醐味ではないか。

10代から数十年たって、ホナミより年上の男性となるともう現役引退の年齢。
「年上の男性の方が…」みたいなクドキもさすがにもう聞くことはないと思っていた。
ところが来たのだ、78歳の男性から。
「あなたのように未来ある若い女性には、わたくしなどふさわしくないでしょうが…」
ふさわしくないふさわしくない。
芸能界の年の差カップルにあこがれるでない!
身のほどを知りなさい!
ホナミは胸のうちで呪文のように唱えるが、
客観的には「あってもおかしくないカップル」と思われているようで、
その現実がいっそう腹立たしい。
フカザワ氏は10年前に奥さんを亡くして以来、一人暮らしの大学名誉教授。
二人の息子たちも独立していて、最初の2〜3年は家事にとまどったものの、
今や日常生活で不自由はないらしい。
お金はある、名誉もある、十分すぎるほど何でもある、若さ以外。
「心のつながりがね、欲しいんですよ」
まあ、そうでしょうよ、心のつながり以外に何があろう。
「このくらいの年齢になりますとね、いまこの世に生きている人々は
みんな同世代という気がしてくるんですよ」
四半世紀以上の隔たりもなんのその、フカザワ氏と同世代にされてしまった。
「ええっと、あっ、うちの母なんかどうでしょう? 夫いない歴2年の陽気な未亡人。
フカザワ先生より3つも若いですよ!」
身内をアテウマにしたものの、フカザワ氏は本当の同世代には食指が動かないらしい。
母の方でも「イヤよ、そんなじいさん」と目もくれない。
越境してこないで、本当の同世代間で完結しといてほしいんだがなぁ。


「フォーエバー・ヤング」1992年 アメリカ映画
監督:スティーブ・マイナー|出演:メル・ギブソン




●最終話:妄想は賢い女の娯楽道
●第二十七話:秘められた人生計画
●第二十六話:若いだけで素晴らしい
●第二十五話:堕ちてくオトコを助けない
●第二十四話:未来は思い出よりも美しい
●第二十三話:終着点を越えて
●第二十二話:品行方正の言い訳
●第二十一話:そういう人になりたい
●第二十話:本当のお姫さま
●第十九話:昔あったかもしれない楽園
●第十八話:愛を仕分ける年末
●第十七話:ステキな小学生を探せ!
●第十六話:初恋はエクスプレス
●第十五話:帰れない観光客
●第十四話:熟女も踊る
●第十三話:あと出しジャンケン
●第十二話:家電ヒストリー
●第十一話:ご長寿アニマルのたくらみ
●第十話:食べるならとことん
●第九話:異邦人は直訳で会話する
●第八話:こだわらない性格
●第七話:白黒つけたい!
●第六話:他力本願はソレだけ
●第五話:冬眠する蝶
●第四話:イタい女
●第三話:サバイバルのことではなく
●第二話:チョイ役の冒険者
●第一話:レモン・ロマン・やせガマン


Storyteller : 高倉アリス

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