冬眠する蝶
冬が来た。
春までの4ヶ月、どうやって生きていけばいいの? オリエは途方にくれる。

北国出身のたっくんは、冬に久々に帰省すると、寒さで頭痛がするらしい。
「そんな寒いところに、なんでみんなは住んでるの?寒いと感じないの?寒いのが好きなの?」
快適な場所を求めて引越しすればいいのに、とオリエは思う。
「そんな簡単にいかないだろ。 先祖のお墓や土地もあるし…」
へえ、そんなものなのか…

子供のころは、両手両足の親指以外すべての指がしもやけになっていた。
大人になってからはさすがにしもやけにはならないが、冷え性体質は変わらない。
使い捨てカイロは手放せない。
そして、冬にこそ男は欠かせない。
冷えきったオリエの体を温めてくれる、なるべく肉厚の高血圧、高体温で暑がりな男が冬にはふさわしい。
たっくんに出会ったのは初夏だった。
猛暑の夏には、いちいち汗だくになる暑苦しい様子に気持ちが萎えかけたが、
いやいや、この男は冬には使える、今度の冬を越すまではキープ、と誓ったのだ。

案の定、たっくんは真冬もヌクヌクだ。
均一に分厚く脂の乗った背中なんか、上トロだ。
お布団の中で裸んぼうで抱き合うと本当にあったかい。
動物は温めあうためにつがいになるのかな。

でも、この冬が終わるまでに、
たっくんはお役ごめんになるだろう。
オリエはきっとお気に入りのマフラーを見つけるから。
もうイメージは出来ている。
モスグリーンの艶のあるウール。
それさえあれば、どんな北風吹く日もウキウキと、たったひとりでお出かけできるはず。
たっくんの繭の中で眠っていたオリエは、殻を破ってチョウチョに化身するのだ。
何にも縛られることなく自由に、自分らしく生きられる場所に飛んでいく。

いまはまだ冬眠中のうわごとにすぎないけれど…。


「手袋をさがす」 著者:向田邦子
「ポルノグラフィックな関係」 1999年 ベルギー・フランス・ルクセンブルク・スイス
 監督:フレデリック・フォンテーヌ|出演:ナタリー・バイ/セルジ・ロペス

妄想女子たちのC'est la vie

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高倉アリス Takakura Alice




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